名義株とはどんな株?

関東商事株式会社を創立し、発展させた社長さんが先頃七六歳で亡くなりました。妻と先妻の子三人が遺されました。
遺産相続にあたって、社長さんが先妻の子の名義にしていた株が相続財産なのかどうか紛争が生じてしまいました。
子供達は、自分達が出資したものではないが、父の仕事を手伝う見返りに父から贈与されたものであると主張し、後妻さんは、
夫は「あれは単に息子達の名を借りただけだ」といっていたと主張して、簡単には解決出来ない状態になってしまいました。

こうした争いはよくあることですが、このような争いを避けるためには、例えば、遺言でこの株は自分の所有であるとはっきりさせておくとか、株の名義人からこの株については名義を貸しただけで出資はしていないという念書をとっておくとかの対策をしておく必要があります。
この例のように本当は他の人が出資しているのに株主名簿には出資していない人の名で載っている株のことを、一般には「名義株」とよんでいます。
現在、日本には株式会社が約六五万社あり、そのうち資本金が五〇〇万円未満の小規模のものが四八・六%も占めているといわれています。何故そんなに小さな株式会社があるかというと、特に株式会社にすると取引先に信用される、人を集めやすい、税務上有利、社長と呼ばれて対外的イメージがよいなどの理由からだと思います。
株式会社は商法によって認められたもので、沢山の人が資金を持ち寄って企業を運営することを予想していますが、今述べた理由で本来有限会社にすべき会社までが、株式会社として設立が図られ、その結果会社を設立するとき出資しなくてはならない七人の設立発起人さえも集められず、社長一人が出資して他の発起人は妻、子、兄弟、友人などの名を借りて形式を整えて設立手続をするケースが多く見られます。
このようにして「名義株」が生れ、これが相続時ばかりでなく、株主総会のときなどにも難しい問題を生じさせているのです。最高裁判所は「名義株の場合は真の出資者が本当の株主である」といっていますが、名義株がないことが望ましいことです。少なくとも混乱を避けるために、名義株であるかどうかが、証明できるようにしておきたいものです。

相続人は誰?

Q1 A女は、先夫との問に生まれた子Bを連れてC男と再婚し、届出をしましたが、C男を交通事故で亡くしてしまいました。死んだC男に先妻との間の子Dと認知した愛人との間の子Eがいた場合、Cの相続人とその相続分について、正解はどれでしょうか。
1 BはC男の相続人にならない。
2 DとEの法定相続分は同じである。
3 A女の法定相続分は1|3である。

A女の連れ子Bは、A女がC男と結婚しても当然にC男の子になるわけではありません。C生存中に養子縁組をしていればその縁組の日からBはCの嫡出子たる身分を取得するので、Cの相続人となりますが、そうでない限りCの相続人にはなりません。
一方、先妻との婚姻中に生まれた子Dは嫡出子として相続人となり、また、愛人との間の子でCの認知を受けているEも非嫡出子として、Cの相続人となります。
それでは、相続人となるA、D、Eの法定相続分はどうなるでしょう。配偶者と子が相続人の場合、配偶者の相続分は1|2で、残りの1|2を子の間で分けることになりますが、非嫡出子の相続分は嫡出子の1|2とされていますので、本問では、Aが、3|6、Dが2|6、Eが1|6となります。したがって、正解は1です。

Q2 では第二問です。A男には内縁の妻Bがいますが、子はなく、両親も他界しており、身内としては妹Cと死亡した弟の子Dがいるだけです。いまA男が死亡したとすると、相続人になるのは誰でしょう。
1 Cだけ。
2 CとD。
3 B、CおよびD。
事実上妻として夫婦生活を送っていても婚姻届を出していない場合には、内縁の妻といわれ、相続については配偶者としての地位を認められません。かわいそうですが、BはAの相続人になれません。
それでは、CとDはどうでしょう。被相続人に相続人となるべき直系卑属 (子や孫)、さらに直系尊属 (父母、祖父母) がいない場合、はじめて兄弟姉妹が相続人となりますから、妹のCは相続人になります。また、Dも、生きていれば相続人となったはずのAの弟の地位を承継してAの相続人となります。
このDの場合を代襲相続といい、それは直系卑属の場合には曽孫以下にもみとめられますが、兄弟姉妹の場合には、甥・姪までで、それ以下の代襲相続は認められていないことに注意して下さい。
結局、2が正解となります。

弁護士の費用

皆さんの中には、弁護士に相談したり、頼みたいことがあっても、いくら費用がかるか心配で、頼みにくいと言われる方がおられるでしょう。たしかに今まで個々の弁護士がそのようなことをPRしたことはほとんど聞きません。

そこで今のべた皆さんのご心配の一端を解決しようと思い、「弁護士の費用」についてごく簡単に説明します。

弁護士の費用は、弁護士会の規則で定めた基準に基づいて依頼者と相談して決定されます。弁護士が依頼された事柄を処理するにも、簡単に解決できるものや裁判など長時間を要したりするものなど種々なケースがあって、単純にはゆきません。基本的には依頼者が受ける経済的価値(利益)を基準にして、さらにその難易度に応じて増減が行なおれています。
皆さんが弁護士に依頼するときは、どの.位の費用がかかるのか遠慮なく聞いていただきたいと思います。
費用には次のようなものがあります。

○一着手金・報酬金―事件処理や契約締結交渉などを依頼した時に支払うもので、着手金は依頼した時に、報酬金は依頼したことが解決、完了し、依頼の目的を達した時に支払っていただきます。

着手金・報酬金の計算方法は、依頼者が受ける経済的利益の価額を区分し、五〇万円以下の部分は一五%、五〇万円を超え一〇〇万円以下の部分は一二%というように、多額の部分の料率を逓減し、各部分の価額に対して規則で定められている料率を乗じて計算した金額を合計した金額が、着手金、報酬金の標準額となります。例えば、依頼者の受ける経済的利益が一〇〇万円の場合右記のように五〇万円以下の部分と五〇万円を超え一〇〇万円以下の部分に区分し、各部分の料率、一五%と一二%を乗じて計算した金額の合計額一三万五〇〇〇円が標準の着手金、報酬金の額となります。

○二相談料―ー 法律問題などで弁護士の意見を聞くなど相談するときに支払っていただきます。三〇分五千円程度です。
○三手数料―ー 契約書や遺言書の作成などを依頼したとき支払っていただきます。一件三万円以上となっています。
○四顧問料―ー 顧問弁護士に支払うもので会社の場合月額五万円以上となっていますが、事業の規模、事業者との関係等を考慮して、その額を減ずることができ、月額一万円とか二万円という場合もあります。もちろん個人も顧問契約を結べます。非事業者の個人については月額五千円以上となっています。

○五実費―ー 事件を処理するときに必要な費用、例えば登記費用や裁判所に予納する費用などは着手金、報酬金などと別に「実費」として負担して頂くことになります。