◇借地関係

○一 存続期間の変更…今までは建物が堅固か非堅固かにより借地権の存続期間に区別がありましたが、新法はこの区別を廃止し、次に述べる定期借地権を除く普通の借地権について最初の存続期間を一律三〇年としました。また、更新後は最初の更新は二〇年、その後の更新は一〇年としました (ただし、当事者間でこれより長い期間を定めることは認められます)。
○二 定期借地権の創設…これは、正当事由がなくても期間満了により借地権を消滅させることができる制度で、次の三種類があります。

長期の定期借地権

これは、存続期間を五〇年以上とし、契約当事者間で契約を更新しないことおよび建物買取請求権を行使しないことなどを約束して設定する借地権です。ただし、通常の借地権契約でも存続期間を五〇年以上と定めることは可能ですので、このような通常の借地権と区別するため、不更新や建物買取請求権不行使の約束については、公正証書などの書面によってしなければならないことになっています。

建物譲渡特約付借地権

これは、借地権設定後三〇年以上経過した日に地主が地上建物を買い取ることにより借地権を消滅させることを約束して設定する借地権です。なお、この建物譲渡特約については先の定期借地権と異なり、法律上は公正証書などの書面にすることは必要とされていませんが、紛争を予防するために書面化しておくべきことは言うまでもありません。

事業用借地権

これは、専ら事業の用に供する建物の所有を目的とする借地権で、その存続期間を一〇年以上二〇年以下として設定するものですが、必ず公正証書によって契約しなければなりません (この点は、先の長期の定期借地権より要件が厳格です)。
○三 正当事由の明確化…更新拒絶の正当事由が具体化され、立退料の提供も正当事由の一要素となることが明文化されました。
○四 借地権の消滅請求等…更新後の建物が消滅した場合、借地権者は解約の申入れをすることができ、一方、地主も、借地権者が地主に無断で借地権の残存期間を超えて存続すべき建物を再築したときは、賃貸借の解約または地上権の消滅請求をすることができることとなりました。
○五 建物滅失の場合の借地権の対抗要件…
借地上の建物が滅失した場合でも、借地上に一定の掲示をすることによって借地権を第三者に対抗できることになりました。
○六 自己借地権…自己所有地にマンションなどを建てて一部分譲する場合などを考慮し、土地所有者以外の者と一緒にその土地に借地権を設定する場合に限り、自己所有地にも借地権を設定できることとなりました。

◇借家関係

○一 正当事由の明確化…借地と同様に明文化されました。
○二 造作買取請求権…旧法下では、借家人が造作買取請求権を行使しない旨の特約は借家人にとって不利益なものとして無効とされていましたが、新法では任意規定とされ、このような特約も有効となりました。
○三 期限付賃貸借の特例…転勤等の不在期間または取壊し予定建物の賃貸借について一定の期間で賃貸借を終了させることができるようになりました。
◇地代・家賃改定手続
○一 調停前置主義の採用…地代・家賃の増減額請求について、訴に先立ち調停を申し立てなければならなくなりました。
○二 調停制度の強化…調停委員は、当事者間に合意が成立する見込みがない場合、当事者間に調停委員会の定める調停条項に服する旨の書面による合意あるときは、適当な調停条項を定めることができ、それは確定判決と同一の効力を有することになりました。

次に、新法が施行されると従前の賃貸借はどのようになるかですが、期間や更新など重要な点については新法は適用されないことになっておりますので、新法施行前の既存の借地借家関係に大きな影響を及ぼすことはありません。