弁護士任官とは

Q テレビで「弁護士任官制度」という言葉を聞いたのですが、どういう意味でしょうか。
A 弁護士任官というのは弁護士経験を積んだ者が、裁判官や検察官の職に就くことを言います。従来は、弁護士が任官を希望する場合には、弁護士個人と最高裁や法務省と個別に交渉する以外に方法がありませんでした。これを最高裁や法務省と任官希望弁護士の個別問題としてとらえるのではなく、日弁連が前面に出て、最高裁や法務省とその採用条件を詰め、また最高裁や法務省による恣意的採用をチェックするシステムを制度として確立しようということです。
Q 弁護士が任官することによって、国民にプラスの面が出てくるのでしょうか。
A はい。紙面の都合上裁判官に限って申しますと、キャリアシステムに基づく裁判官制度では人事を気にして裁判をしたり、社会経験が未熟なため社会常識にそぐわない裁判をする弊害があり得ますが、弁護士経験を積んだ任官者は、人事を気にして裁判をすることはないでしょうし、裁判にもその社会的経験が生かされますので、弁護士経験を積んだ任官者が増えれば、より国民の納得する裁判が増えることになると考えられます。
Q 弁護士から任官者が増えると裁判官の数が増え過ぎませんか。
A そのようなことはありません。むしろ裁判官という仕事に魅力を失って、中途退官者が増えているのが現状です。
このような裁判官の減少を食い止めるためには、弁護士からの任官が毎年数十名以上必要ではないかと言われています。
Q しかし、家庭の事情や転勤の問題もあるでしょうから、弁護士からそんなに多くの任官者を送り出すことが本当に出来るのでしょうか。
A 問題はそこです。現在、最高裁や法務省から採用についての条件が日弁連に出されておりますが、これらの採用条件をもっと緩和してもらい、短期的任官の道を広げることと、最高裁などに恣意的採用をさせないことが必要です。
又、任官する場合はもとより、将来退官したあとも、日弁連や単位弁護士会などが、経済的な面等でバックアップ体制をとることも必要ですね。
日弁連がどこまでこの問題に本腰を入れるかに弁護士任官の将来がかかっていると言っても過言ではありません。
Q 何となく問題点が分かったような気がします。ありがとうございました。

仲裁制度の活用を

 皆さまの中に、少額の債権債務問題、親族間の紛争、騒音等近隣との紛争などを抱えながら、裁判には躊躇を感じ、その解決に悩まれている方がおありかと思います。
そのような方のために、簡易、迅速かつ低廉に諸問題の解決を図ることができる制度をご紹介しましょう。それは第二東京弁護士会仲裁センターで行なっている仲裁制度です。
仲裁制度は一般に馴染みが薄いので、簡単に説明しますと、当事者が紛争を解決するため、相互の合意により、いわば私設の裁判官として選定する仲裁人の裁定に服することを約し、それに基づき仲裁人が当事者の言い分を聞き、証拠を検討して裁定する手続をいいます。なお、この裁定を「仲裁判断」といい、判決と同一の効力が認められます。
それでは、この仲裁センターでの手続の流れを説明しましょう。
まず、仲裁センターに求める仲裁の内容を記載した簡易な申立書を提出します。仲裁センターはこれを受けて、仲裁人を紹介し、手続を進めることになります。仲裁人には経験豊富な弁護士や学識豊かな学者がなります。
この仲裁手続は裁判より簡単で、面倒な書類の作成もほとんどなく、一般の方でも簡易に利用できます。仲裁期日には仲裁センターに出頭しなければなりませんが、通常の裁判などより時間を十分にとって、申立人・相手方の言い分を聞いてくれますので、比較的短期間で解決できます。
仲裁人は、双方の言い分や証拠を検討し、法律と条理に基づいて慎重に判断を下します。この判断は前述のように判決と同一の効力をもち、争いが蒸し返されることもありません。
さて、この仲裁手続に向く事件としては、少額事件であまり費用と時間をかけたくないもの、近隣や親族との争いのように裁判に持ち込むのは角が立つものなどのほか、ケンカの後始末や婚姻外の男女関係など裁判所が必ずしも丁寧に扱ってくれないものがあろうかと思います。
費用は早見表のように、申立費用 (申立時に一万円)、期日日当 (申立人、相手方それぞれ五千円を期日毎に)、成立報酬 (仲裁が成立した場合に、紛争の価格に応じ、仲裁人の定める割合に従う) の三本立となっています。

仲裁費用の早見表
紛争の価格 成立報酬 申立費用 期日日当 合  計  各自の費用
 10万円  15,000円 申 立 人10000円 申立人。相手方各自5000円  35,000円 申立人 22,500円
     相手方 12,500円
 20万円  30,000円 〃 〃  50,000円 申立人 30,000円
     相手方 20,000円
 30万円  45,000円 〃 〃  65,000円 申立人 37,500円
     相手方 27,500円
 40万円  60,000円 〃 〃  80,000円 申立人 45,000円
     相手方 35,000円
 50万円  75,000円 〃 〃  95,000円 申立人 52,500円
     相手方 42,500円
 60万円  87,000円 〃 〃 107,000円 申立人 58,500円
     相手方 48,500円
 70万円  99,000円 〃 〃 119,000円 申立人 64,500円
     相手方 54,500円
 80万円 111,000円 〃 〃 131,000円 申立人 70,500円
     相手方 60,500円
 90万円 123,000円 〃 〃 143,000円 申立人 76,500円
     相手方 66,500円
100万円 135,000円 〃 〃 155,000円 申立人 82,500円
     相手方 72,500円


自己破産について

Q 私の友人がクレジット会社などから多額の借金をして返済できなくなったのですが、どうしたらよいでしょうか。
A 一人で悩まないで、すぐに弁護士に相談するように話してあげて下さい。一〇年以上前に、サラ金などからの借金が原因で一家心中や自殺が多発して社会問題になったことがありました。そこで、昭和五八年にいわゆるサラ金二法が改正されて、厳しい取立やあまり高い利息か禁止されるようになりました。これによって、一時サラ金の問題も解決したように思われましたが、また最近になって、カードローンやクレジットカードの普及で、若い人などが安易に借り入れを行ない、返済不能になる事態が多発するようになってきています。
Q 自己破産という言葉を聞いたことがありますが、そのような場合に自己破産になるのですか。
A 借金の金額などから、任意整理によるか自己破産をするかを判断します。
Q その任意整理とか自己破産とかをどんなものか説明して下さい。
A 任意整理は、例えば借金総額が三〇○万円位以下であれば、余程の事情かない限り何も破産までしなくても本人の努力次第で解決できますから、貸金業者等と交渉して利息を安くしてもらうなどの支払可能な条件に変更してもらい返済しようというものです。自己破産というのは、借金の額があまりに多くなると努力するにも限界がありますので、本人から裁判所に申し立てて「破産者」にしてもらうのです。
Q 破産者になるとどうなりますか。
A 世間的には、経済的に失敗した人という見方をされますので信用は無くなりますが、人として生活していく分には、それ程の制限はありません。公職や会社の取締役などには就任できないということはありますが、運転免許や選挙権などは無くなりまぜん。
Q 破産者になると、それまでの借金は返さなくてもよいのですか。
A 「免責」を受けるまでは借金は無くなりません。
Q 免責は誰でも受けられるのですか。
A 原則として受けられます。但し、借金の仕方が詐欺のような犯罪的なものとか、破産申請のときに財産を偽って申告するような不誠実な場合には受けられないことがあります。又、免責を受けても、申告のときに知っていながら記載しなかった債権者の分についても免責されません。