最低資本金未達成の会社との取引

Q 最低資本金制度というのはどのようなことですか。
A 株式会社は資本金が一〇〇〇万円以上、有限会社は三〇〇万円以上でなければならないという制度です。最低資本金額以下の会社は平成八年五月三一日までに増資又は組織変更しなければならないことになっています。
Q 五月三一日までに最低資本金を達成しなかった会社はどうなるのですか。
A 本年六月一日に解散したものとみなされます (但し、阪神大震災による特例として平成七年一月一七日において大阪府及び兵庫県に本店があった会社は除かれます)。
なお、解散したものとみなされても、その後三年以内に会社継続の決議をして増資又は組織変更をすれば、会社を存続させることができます。
Q 当社は取引先から振り出してもらった平成八年六月が支払期の手形を持っておりますが、この取引先が最低資本金を達成せず解散したものとみなされた場合、この手形を取立に回しておいて大丈夫でしょうか。
A 解散会社振出の手形が期日に落ちるかどうかという問題は、その手形の支払銀行と解散会社との銀行取引の状況如何にかかわります。解散したとみなされたからといって、銀行取引ができなくなるわけではありませんので、解散会社の当座預金の口座に資金がある限り決済はできます。しかしながら、支払銀行が解散会社に対して貸金を持っていて、当座預金と相殺してしまったような場合には資金不足により不渡りとならざるを得ません。
また、解散会社が清算手続きを開始すると、一定期間債務の弁済が禁止されることにより手形が不渡りとなることもあります。
Q 解散会社と平成八年六月以降も取引を続けて大丈夫なのでしょうか。
A 結論から申しますと、極めて危険であるということになります。
会社が解散をすると、解散会社は清算の目的の範囲内の行為しかできなくなり、それまで行っていた営業行為はできなくなります。これに反して解散会社の社長が勝手に営業行為を行ったとしても、その行為はすべて無効とされます。したがって、解散会社に品物を売ったとしても、売主は、解散会社にその代金を請求できないことになります。そして、このことは、取引の相手方が解散会社であることを知らなかったとしても同様に無効とされますので、注意を要します。
Q それでは、そのような危険を避けるために解散会社の社長から個人保証をもらっておいたら安全でしょうか。
A 安全とは言えません。解散会社の主たる債務が無効なので、保証債務も無効となり、個人保証をもらっても無意味ということになります (もっとも、その社長が保証債務を任意に履行してくれれば別です)。
このように、法律的には、解散会社との取引は極めて危険ですので、慎重に対応する必要があります。

相続預金の払戻

Q 父が亡くなったのですが、父名義の銀行預金から私の法定相続分だけ払戻してもらえるのでしょうか。 相続人は母と子が三名ですから、母の相続分は二分の一、子は各自六分の一で、遺産分割の協議は成立していません。
A 銀行としては原則として、相続人全員の同意する旨の文書と全員の印鑑証明書がなければ払戻しに応じないでしょう。
Q しかし最近、相続人が遺産である銀行預金を遺産分割協議前に共同相続人全員の同意なしに法定相続分の払戻請求できるとの判決が出たと聞きましたが。
A それは東京高裁平成七年一二月二一日判決(金融法務事情一四四五号五六頁)のことで、上告されずに確定しました。
Q その高裁判決が出て、しかも確定しているのですから、最高裁で反対の判決が出ない限り、私の場合も銀行へ払戻しを求めれば応じてもらえますね。
A 必ずしもそうとはいえません。たしかに、この東京高裁判決が出て以来、一部の相続人による相続預金の払戻請求は、裁判を起こさなくても認めても当然だという意見もあります。
しかし銀行とすれば、他の相続人から苦情が出て相続人間の争いに巻き込まれたり、二重払いをする危険を防がねばなりません。実際問題として相続人の確定一つを考えても、誰も知らなかった非嫡出子が後から現れることもあり、なかなか困難です。それで確認できている相続人全員の同意を得て各相続人の払戻しに応じることになります。同意が得られなければ、やはり判決で決まったらお支払いしましょうということになるわけです。
Q では葬式費用だけでも払戻してほしいのですが。
A 葬式費用だからといって特別扱いはされません。しかし緊急の場合は一部の相続人だけの払戻請求に応じる場合もあります。その場合も葬儀社の請求書か領収書を示す必要があるでしょう。
Q 葬儀費用として必要なことが確認されれば、いくらでも払戻してもらえますか。
A そうはいきません。 払戻請求者の法定相続分の範囲内の金額です。
Q 私の場合法定相続分は六分の一です。父の預金は三〇〇万円と六〇〇万円の二口あり、葬儀費用は二〇〇万円ですが。
A これについての最新の判例である東京地裁平成七年一一月三〇日判決(金融法務事情一四四一号三二頁)によると、預金債権は一口ごとに別個独立の債権であるため、払戻しのできるのはそれぞれの預金のうち法定相続分の限度にとどまるとの趣旨の判示をしています。
そうすると本間の場合は三〇〇万円の六分の一の五〇万円と六〇〇万円の六分の一の一〇〇万円の合計一五〇万円の払戻しを受けられることになります。
相続預金の払戻し手続きについては各銀行で多少の相違があるようですから、窓口でよく相談してみて下さい。

弁護士報酬規程が改正されました

【Q】弁護士報酬規程を改正したそうですが、電車賃のように値上げするのですか。
【A】いや違います。今までよりわかりやすく合理的なものにしたもので、市民団体等外部の意見も聞いて作ったものです。
大きな改正点は、報酬説明書の交付義務を定めたこと、初回市民法律相談料というものを設けたこと、着手金と報酬金の比率を一対二にしたこと、離婚や境界に関する事件、借地非訟事件等の着手金を定額にしたこと等です。
【Q】それらを詳しくご説明下さい。
【A】報酬説明書については、弁護士報酬等についてあらかじめ十分に説明し、さらに依頼者から申出があれば、弁護士報酬等の額、その算出方法および支払時期に関する事項などを記載した弁護士報酬説明書を交付すべきものとされました。
また、法律相談料は、事件単位で個人から受ける初めての法律相談で、事業に関する相談以外は三〇分ごとに五〇〇〇円と定められました。事務所によっては最初の一時間を一万円とする例があります。
【Q】着手金と報酬金はどうでしょうか。
【A】従来、着手金と報酬金が一対一の比率でしたが、市民が依頼しにくいという批判もあり、その比率を一対二に改めました。
例えばこれまで着手金、報酬金共に三〇万円であったものを今度は着手金を二〇万円、
報酬金を四〇万円としました。
なお、事件の経済的利益が算定不能の場合は、その利益を八○○万円と看做すことにしましたので、着手金四九万円、報酬金九八万円となります。
【Q】離婚、境界確定事件、借地非訟事件の着手金を定額にしたということはどういうことですか。
【A】これらは、市民が最も利用する事件です。単純な離婚交渉や離婚調停の着手金は三〇万円以上五〇万円以下、離婚訴訟事件の着手金は四〇万円以上六〇万円以下となっていますが、財産給付を請求する場合や事案が複雑な場合は増額されることになります。境界に関する事件の着手金は四〇万円以上六〇万円以下、借地非訟事件の着手金は、借地権価格が五〇〇〇万円以下の場合は三〇万円以上五〇万円以下、借地権価格が五〇〇〇万円を超える場合は右の金額(三〇万円以上五〇万円以下)に五〇〇〇万円を超える部分の○・五%を加算した金額となります。

※ 平成二〇年現在、弁護士会の報酬規程が廃止され、自由に契約できることになっています。