製造物責任法

Q 平成六年六月二二日に成立した製造物責任法とはどんな法律ですか。
A 同法一条には、「この法律は、製造物の欠陥により人の生命、身体又は財産に係る被害が生じた場合における製造業者等の損害賠償の責任について定めることにより、被害者の保護を図り、もって国民生活の安定、向上と国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。」とあります。
Q 今までの法律では、そうした損害賠償の請求は出来なかったのですか。
A 従来も民法の不法行為の規定や、直接の契約関係にある場合には契約責任ということで扱われる場合もありました。
しかし、大阪でのテレビ発火責任の判決がいうように、「規格化された工業製品の場合、流通の過程で販売店や小売店が個々の製晶の安全性を確認した上で販売されることは通常予定されておらず消費者において個々の製品の安全性の有無を判断すべき知識、技術を有しないので、製品の流通は、製造者が製品を安全なものであるとして流通においたことに対する信頼に支えられている。」のですが、今までの民法では、消費者がメーカーを訴える場合、メーカーの過失を立証しなければならなかったのが、この法律ができたので欠陥と損害に因果関係があれば過失を立証せずに責任を問えるようになったのです。
Q 無過失責任ということでしょうか。
A そうです。しかし、①開発危険の抗弁といって当時の科学水準では欠陥が認識出来なかったとか、②部品・原材料の製造業者の抗弁、つまり部品又は原材料として使用された製造物の欠陥が、他の製造業者の指示に従ったことにより生じ、その欠陥が生じたことに過失がないと立証されれば、責任を負いませんが、その他の場合は、過失の立証を要せず、責任が科せられます。
Q 欠陥にはどんなものがありますか。
A 製造上の欠陥、設計上の欠陥、指示・警告上の欠陥の三つがあり、その欠陥とは、人の期待する安全性が欠けている場合です。指示・警告上の欠陥とは、使用方法につき注意を与える必要がある場合に、それを怠ることです。
Q この法律で被害者を十分救えますか。
A この法律の欠点として、推定規定、つまり欠陥の存在及び欠陥と損害との因果関係についてこれらを推定する旨の規定がないから、情報公開の規定の新設とか、専門家の協力が必要です。また、不動産には適用されないことも問題です。
(この法律は平成七年七月一日から施行されます。)


行 政 手 続 法

Q 先生、平成五年一一月に成立した行政手続法が、平成六年一〇月一日から施行されたと聞きましたが、どんな法律か教えて頂けますか?
A よいことに気付かれました。この法律は、日本弁護士連合会の司法制度調査会も大いに政府に意見を言って作られました。行政手続の透明性、公平を目的とする行政手続の基本を定めるものです。ですから、第一条には「この法律は、処分、行政指導及び届出に関する手続に関し、共通する事項を定めることによって、行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することを目的とする。」と書いてあります。
Q 今まで不透明で不公正だったのでしょうか。
A 日本の行政は、裁量に任されたものが多く、窓口で市民が戸惑うことが多かったと思います。
ところが、この法律で裁量の基準を文章で明文化することになったので、市民は戸惑いもなくなりますし、おかしいと思えばその判断の基準を問いただすことが出来ます。
具体的には、①許認可等の申請に対する審査基準は、具体的に定め、公表するものとし、②許認可等の申請に対する標準処理期間は定めるよう務めるものとし、③不利益処分の処分基準について定めて公表することに務めることとし、④聴聞に係る文書閲覧権を保障し、⑤申請の拒絶処分と不利益処分についてはそれぞれ理由付記をすることにされています。ただし、適用除外が多くあるので注意を要します。
さらに、⑥強制権限のない官庁が行う行政指導に従うかどうかは自由と定められています。
Q 基準の決め方はどうなるのでしょう。
A 施行された一〇月までに各省庁で作り、公表されました。政府発表では、施行時に約九〇パーセント基準が定められているとしています。日本弁護士連合会ではこれをチェックし、作っていなかったり、妥当でない場合は、意見書を提出する予定です。
Q この法律のその他の影響はどうなりますか。
A 今まで不透明だった行政指導の概念が明確化し、外国も日本をより信頼するでしょうし、規制緩和にも役立ちます。つまり、合理性のない許認可は、届出制に変わり、やがて廃止されることになります。この法律は、地方公共団体独自の行政指導と許認可には適用されないのですが、我々皆でこの法律の実効性について見守りたいものです。

私道の通行権

一 公道に出るために他人の私道を通らざるを得ない人に対して、私道の所有者がその通行を妨害して争いになることがあります。その動機としては、所有者がその私道を自分の宅地や駐車場等として使おうとして他人の通行を禁止したり、あるいは、私道として所有していても一銭にもならないので隣地の人に高く買い取ってもらいたいため、嫌がらせに隣地の人の通行を妨害するようなこともあります。
二 私道といっても道路であることに変りはありませんので、誰でも自由に通行できそうに思われますが、法律的には逆で、私道は私人の所有物であるため、所有者の承諾なしに他人が勝手に通行できないというのが原則なのです。では、私道所有者の一方的な通行妨害に従わなければならないのでしょうか。
三 公道に出るために他人の私道を通らざるを得ないような人は、多くの場合、その私道に対して何らかの通行権をもっているものです。法律では、その通行権として、囲繞地通行権、通行地役権、契約による通行権の三つを定めており、このほか裁判例で、通行の自由権というもの等が認められています。通行権が認められる場合には、通行権者は裁判所に訴えて、通行妨害を排除してもらうことができます。
四 囲繞地通行権いうのは、公道に直接通じていない袋地の所有者がその袋地を囲んでいる他人の土地を、その所有者の承諾を得ないで通行し、公道まで出られる権利をいいます。この権利は隣接する土地の有効利用を図るために法定されたもので、どういう場合に認められるかは民法に定められています。囲繞地通行権により、建築確認に必要な幅員の通路の通行権が認められることもあります。
五 通行地役権というのは、当事者間の契約により設定される、他人の土地を自分の土地の通行のために使用でき、これを第三者にも主張できる強い通行権です。裁判例では分譲地の道路などでこの権利が認められることが多いようです。又、通行する人が道路を開設し善意なら一〇年以上、悪意なら二〇年以上経ったときは時効による通行地役権が認められることもあります。
六 契約による通行権というのは、賃貸借とか使用貸借等の契約による通行権です。
七 通行の自由権というのは、私道のうち建築基準法による道路位置指定を受けたものやみなし指定道路(いわゆる四二条二項道路)について、開設済みの通路部分の通行が妨害された場合に、隣接者などその利用が日常生活上必須である人に認められる権利です(なお、このような道路については、役所から注意してもらうよう、役所に働きかけるという方法があります)。
以上のような通行権が認められない場合は、私道所有者による通行妨害を甘受せざるを得なくなります。