金融商品販売法

Q 平成一三年四月から「金融商品販売法」が施行され、個人投資家を守るというのですが、どういう法律ですか。
A 九ヵ条からなる法律で、四つのポイントがあります。
① 銀行、証券、保険会社などの金融機関は、販売する金融商品について重要事項を説明する義務がある。重要事項とは、例えば、証券が元本割れの恐れがある、あるいは、証券販売代理店の財務状況の悪化が原因で元本欠損の恐れがあれば、そうしたこと及びその原因となるもの。
② 対象となる金融商品は、株式、投資信託、保険、金融派生商品など広範囲にわたる。ただし、郵便貯金、簡易保険、商品先物取引(商品投資に係る事業に関する法律で規定)は対象外。
③重要事項の説明がなかったことによって損害が生じたときは、販売業者に損害賠償請求ができる。損害額は、元本割れの金額と推定する。ただし、重要事項の説明がなかったことの立証責任は、消費者側にある。
④ 各金融機関は、独自に勧誘方針を策定し、公表する。勧誘方針とは、消費者に対してしてはいけないことなどを決めた自主規制。
顧客の知識や経験、資産、家計の状況に合った勧誘をすることや、勧誘方法、場所、時間帯を考慮することなどを盛り込む。
Q 変額保険等が社会問題化したことから、この法律が作られ、金融機関が説明すれば、リスクは消費者に移転するようになったと聞きますが、今までこうした法律は全くなかったのでしょうか。
A そんなことはありません。例えば証券取引法で、投資信託や外貨建て金融商品の目論見書や説明書には、元本割れの可能性を記すよう義務づけられました。保険業法第三〇〇条にも同様の規定がありました。しかし、銀行法にはなかったようです。銀行が外貨預金や投資信託、抵当証券を扱うと予想していなかった為と思われます。
Q それでは、実際は従来とどう変わりますか。
A 大きな変化はそれ程ないと言われていますが、例えば、証券会社の代理店がその証券会社が債務超過であぶないのに、それを告げずに証券を売って、それで証券会社が倒産したような場合、代理店にも損害を請求できるというのが従来と異なります。
しかし、実際の裁判では、「説明がなかったことの立証」を消費者側が負わねばならず、又消費者が目論見書を読まなかった過失のようなものは、金融商品販売法でもつきまとい、過失相殺の問題が起ります。
Q 証券の場合、元本欠損額というのが、転売して元本よりすくなくなった部分というのでわかりますが、保険の場合、元本欠損額は、どのように計算しますか。
A 一般には、解約返戻金額と既払込保険料の差額だと言われています。
Q 販売業者が、「業務又は財産の状況の変化を直接の原因として、元本欠損が生ずる恐れがあるときは、その旨」を説明しなければならない、とはどういうことですか。
A 「当社は、債務超過で、このままでは一年後に倒産するかもしれない」というとき、その旨を説明しなければならないということです。しかし、そんなことをしたら金融商品が売れないので期待できないかも知れません。そして実際に倒産したらなかなか回収できないのが実態で、損害賠償義務があるといっても余り意味がありません。
Q 何だか余り期待できなくなってきました。
A この法律では勧誘方針を定めなかったり、これを公表しないと、五〇万円以下の過料に処することになっているので、勧誘方針がよりクリアーになるというのを期待したいし、又代理店などもおいしいことばかり言わず、リスクをきちんと説明することを期待したいものです。


民事再生法による個 人 再 生 手 続

Q=今年の四月から施行された個人再生手続というのはどのようなものですか。
A=多額の負債を抱えて支払不能状態に陥った人が、破産をするのではなく、裁判所の簡易な手続で、負債の支払条件を緩和することにより負債の返済を可能にしようという手続です。
Q=任意整理や特定調停手続とどこが違うのですか。
A=①任意整理や特定調停手続は、弁護士に依頼したり、裁判所の調停手続を利用するなどして、債権者全員と個々に話合いをして負債の支払条件を緩和してもらうものです。ですから、債権者の中で反対する会社があると、その会社の負債については、支払条件を変更することはできません。又、債権者との個別の話合いにより支払条件を定めるものであることから、負債額のうち利息は免除してもらっても元本は全額支払うことが前提となることが多いのです。
②これに対して、個人再生手続では、支払条件を変更するためには、債権者の全員の同意がなくても、過半数の同意、若しくは、裁判所の認可があればよいことになっています。また、支払条件の内容として、負債について利息のみならず元本の多くの部分(元本の八○パーセント程度まで)をカットしてもらうことも可能です。
Q=破産手続とどこが違うのですか。
A=①破産手続は、破産宣告時の負債を破産宣告時の財産をもって返済する手続なので、生活必需品以外の財産は全て供出する必要があり、家屋その他の財産をすべて失ってしまいます。しかし、免責を得れば負債の返済をする必要がなくなります。但し、負債に保証人がついているときには保証入は直ちに債権者から請求を受けることになります。
②これに対して、個人再生手続では、財産を供出する必要がないので、家屋を手放さなくても、その他の財産を供出しなくても済みます。しかし、負債については一〇〇パーセントの免除を受けることはできず、支払司能な一定額を三年ないし五年間で分割して支払っていく必要があります。なお、保証人の関係は破産手続とほぼ同様です(後述の住宅ローンの場合は例外です)。
Q=その「支払可能な一定額」というのはどの程度の金額をいうのですか。
A=原則として、三年間にわたって負債の返済として支払っていくことが可能な金額です。但し、以下の金額よりも低額であってはなりません。①負債総額(後述の住宅ローン等の金額は除く)の二〇パーセントの額(但し、負債総額が一五〇〇万円以上のときは三〇〇万円でよい)、②一〇〇万円、③給与所得者の場合には可処分所得(最低限度の生活を維持するために必要な金額を差し引いた額)の二年分の額。
Q=負債額はいくら多くてもよいのですか。
A=個人再生手続が利用できるのは負債額の合計が三〇〇〇万円以下の場合となっています。但し、その三〇〇〇万円は、住宅ローンの金額や担保でカバーされている負債の金額、再生手続開始前の罰金等を除いて計算します。
Q=住宅ローンがある場合には利用できないのですか。
A=住宅ローンがある場合でも利用できますが、住宅ローンの総額を減額することは難しく、ローンの組み替え等による毎月の支払額の減額をしてもらうことは可能です。

消費者契約法

Q 消費者契約法が平成一二年四月一日から施行されたそうですが、どんな法律ですか。
A 消費者が日常生活に必要な商品やサービスを購入するとき、事業者との間には商品やサービスに関する知識や情報あるいは交渉力において大きな格差があるので、消費者と事業者とが対等な立場で契約を締結できるように作られた法律です(一条)。
Q そのために具体的にはどのような規定が盛り込まれていますか。
A 不当な勧誘による契約は取消せますし(四条)、不当な内容の契約条項は無効になります(八条)。
Q 不当な勧誘による契約の取消とはどんなことですか。
A 事業者の①「不実の告知」、②「断定的判断の提供」、③「不利益事実の不告知」によって消費者が誤信したとき、および④ 「不退去」、⑤「退去妨害」によって消費者が困惑したとき、契約の申込みや承諾の意思表示を取消せます(四条)。
Q 取消権はいつまで行使できますか。
A 消費者が事業者のこのような行為によって契約させられたことを知った時から六か月聞、契約を締結した時から、五年間は取消せます(七条一項)。
Q 次に、契約が無効になるときは。
A (1)業者が契約上の義務を怠った場合、過失に基づいて他人の権利や利益を侵害した場合、商品に瑕疵(欠陥)があったことにより消費者に損害が生じた場合の各損害賠償責任を全部免除する条項は無効です。(2)そしてこれが事業者の故意または重大な過失による場合は、損害賠償責任を一部免除する条項でも無効になります(八条)。
Q 欠陥商品による損害についての免除規定が無効にならない場合があるそうですね。
A 商品の欠陥による損害の賠償責任は、事業者が交換または修理責任を負う場合、または、事業者と第三者との間の契約で第三者が責任を負う場合には、事業者の責任を免除する条項があっても無効になりません(八条二項一号・二号)。
Q 他に無効となる場合がありますか。
A ①契約解除の際に消費者が支払うべき賠償金や違約金が、平均的な損害額を超えるときは、その超える額は無効です(九条一号)。②支払期限後の遅延利息については、年一四・六%を超える額は無効です(九条二号)。但し、金銭消費貸借には適用されません。利息制限法四条が優先し、例えば元本一〇万円未満の場合は上限が二九・二%となります。③民商法等の任意規定による場合に比べて、消費者に不利な条項であって、信義誠実の原則に反し、消費者の利益を一方的に害する行為も無効です(一○条)。
Q クーリングオフはできませんか。
A 消費者契約法にはクーリングオフの規定はありませんが、他の法律をすべて併用できますから、特定商取引法(旧訪問販売法)が適用される場合ならクーリングオフにより解約できます。