婚約不履行の責任

Q 私は、婚約者から婚約を解消されましたが、慰謝料を請求できますか。
A 婚約が成立していて、正当事由がないのに解消されたのなら、請求できます。
Q 婚約とは、どういうことでしょうか。
A 将来結婚しようという男女間の合意のことです。
Q 約束さえすればよいのでしょうか。
A そうですが、単なる「恋愛関係にある男女の睦言」では、婚約とは言えないでしょう。
 ある程度人に知られている方が、成立を証明しやすいでしょう。双方の両親や友人に二人そろって報告したとか、結納をかわすなどです。
Q どちらかが婚約を解消すれば、相手方は慰謝料を請求できますか。
A 婚約の解消に正当事由がなければ、相手方は慰謝料を請求できます。
Q 婚約解消の正当事由とは、どんなことでしょうか。
A 将来の夫婦生活の円満な遂行を妨げる事情、といわれています。婚約は婚姻よりも前の段階であり、婚約解消理由は離婚の理由よりゆるやかに認められるでしょう。
Q どんな場合に正当事由が認められますか。
A これまでの判例では例えば、相手方の不貞、相手方の結婚式直前の家出、相手方の性的欠陥等があります。
Q 反対に正当事由と認められないのは。
A 性格的に合わない、親の反対、年廻りが悪い、等の理由は認められません。
Q 婚約解消に正当事由が認められない場合の慰謝料はどれ位ですか。
A これまでの判例では個別事情によって三〇万円から五〇〇万円と、いろいろです。事情によって、これより少ないことも、多いこともあるでしょう。婚約したことが周囲の人々にどの程度知られていたか、婚約期間の長さ、婚約を解消された方にも落ち度はなかったか、妊娠していたか、相手方の支払い能力、その他すべての事情が考慮されて決まります。
Q 結納金は返してもらえますか。
A 結納金と婚約指輪は、婚約が解消されれば目的不到達ですから、どちらにも落ち度がない合意による解消の場合は、不当利得として返さなければなりません。
 しかし、破約の原因が結納を交付した側にあるときは、破約の制裁として結納の返還を請求できないとした判例があります。
Q 嫁入り道具の購入費や式場の予約費は、どうなりますか。
A 嫁入道具購入代金等について、細かく検討した判決(徳島地裁昭五七・六・二一)によれば、代金の七割を損害額として認めているのが参考になります。
Q 婚約成立に伴い勤務先を退職したための損害はどうでしょうか。
A 右の判決では、これも勤務先退職による逸失利益として損害に入れています。

失業給付を受けたい

輝 今度会社を退職しました。雇用保険の失業給付を受けたいと思いますが、どのような手続きをしたらよいですか。
機 まず、会社から離職票をもらい、雇用保険被保険者証と、印鑑、写真、住民票又は運転免許証、預金通帳を用意して、公共職業安定所(ハローワーク)へ行って、求職の申込みをします。その後、指定された日にハローワークへ行き、失業認定申告書を提出する必要があります。
輝 失業給付はいくらもらえるのですか。
機 仕事が見つかるまでの間の「基本手当」として、従前の給料のおよそ六割から八割の間の額が支給されます(但し、年齢区分別に、日額で約八千六〇〇円から約一万六〇〇円の上限額があります)。 給料の低い人ほど高い率になっています。なお、申込みをした日から最初の七日間分は支給されません。詳しい金額は、ハローワーク発行のパンフレットを参照して下さい。
輝 いつもらえるのですか。
機 失業認定申告書を提出した後になります。最初にもらえるのは、求職の申込みをしてから一ヵ月ほど経ったころになるようです。但し、退職の理由が、倒産などでやむを得ず退職したのではなく、自分の都合で退職したような場合には、最初の七日間に加えて、その後三ヵ月間は支給されないことになっていますので、三ヵ月以上先になってしまいます。
輝 いつまでもらえるのですか。
機 新たに就職するまでの期間ですが、いつまでも受給できるのではなく、一定の期間に限定されています。その期間は、被保険者であった期間の長短や、年齢、退職の理由(倒産、解雇などによりやむを得ず退職したのか否か)、障害者など就職が困難な者か否か等により異なります。例えば、会社の倒産により退職した四〇歳の人で、被保険者であった期間が五年未満の場合には九〇日間、五年以上一〇年未満で一八〇日間、一〇年以上二〇年未満で二一〇日間、二〇年以上で二四〇日間となっています。自己都合退職の人はこれよりも短く、障害者等で就職が困難な人はこれよりも長く受給できます。
輝 求職の申込みをした後、再就職するまでの間に、日々の生活のためにアルバイトをしようと思いますが、基本手当はどうなりますか。
機 アルバイトの内容、時間、収入額等により、アルバイトで得た金額の一部が基本手当から差し引かれたり、又は、アルバイトの日数分の基本手当をもらえなかったり、更には、正規に就職したものとみなされて基本手当そのものが受給できなくなることもあるようです。事前にハローワークに問い合わせるとよいでしょう。
輝 年齢が六五歳以上の場合には、何か制限がありますか。
機 六五歳より前から引き続いて働いて六五歳以上になって退職した場合には一定の給付が受けられますが、六五歳を超えてから就職したときは、失業給付は受けられません(短期雇用や日雇労働の特例を除きます)。
輝 会社が雇用保険の手続きを怠っていたときには、失業給付を受けられませんか。
機 二年前までさかのぼって被保険者として取り扱ってもらうことも不可能ではありませんので、会社やハローワークと相談するとよいでしょう。
 なお、これまで述べたことでも、いろいろな制限のあるものがありますし、又、基本手当以外の各種の手当もありますので、詳しくはハローワークでお尋ね下さい。


訴訟費用の負担

訓 この度、売掛金の回収を弁護士に依頼して、判決で相手の預金を差押えたのですが、判決に書いてある「訴訟費用は被告の負担とする」ということについてお聞きします。
 この訴訟費用には、こちらの弁護士費用は入らないのでしようか。
掘 入りません。民事訴訟法第六一条は、訴訟費用は、敗訴の当事者の負担とする、と書いてありますが、この訴訟費用とは、訴状に貼る印紙代、鑑定代、証人の日当、勝訴当事者の旅費等を言い、弁護士費用は、これに含まれないと言われています。
 但し、公害や交通事故、医療過誤のような場合、訴訟費用としてではなく、損害額として、一定の範囲の弁護士費用を請求することは認められています。
訓 相手が買掛金を払わないから訴えたので、弁護士費用が訴訟費用に入らないのはおかしいと思います。
掘 確かにそうしたお考えもありますが、これは、日本の訴訟は必ずしも弁護士をつけなくとも本人でも出来るという制度になっていることが前提としてあります。
 ドイツの場合は、弁護士をつけないと裁判が出来ない仕組になっているので、訴訟費用になります。
 日本でも実際は多くの裁判では弁護士に頼まないと出来ないのですが、この矛盾を解決すべく、今度の司法改革では、弁護士費用を敗訴者の負担にすることが検討項目に挙げられています。
訓 それはよいことだと思います。
掘 売掛金のような場合は、そのように改革することも良いでしょう。しかし、国を相手に人権をめぐる訴訟をしたり、病院を相手に訴えを提起する場合、敗けたら相手の弁護費用も払わなければいけないと思うと、裁判所に権利救済を求めることを躊躇するようになり、良くないといわれています。また諸外国では法律扶助が発達して、裁判費用を立替えて貰えるが、日本の法律扶助はお寒い人権後進国なので、そうした改革はまだ早いという意見が多くあります。
訓 わかりました。ただ払うべきものを払わないから訴えた場合、弁護士費用を相手からとれないのでは、訴をあきらめるケースもあると思いますが。
掘 そのとおりです。従って、事案の性質によって裁判所が弁護士費用を訴訟費用に入れたり、入れなかったりする制度が良いと思いますが、そうすると弁護士費用は、どの弁護士に頼んでも大体同じでなければなりません。
 ところが、司法改革の審議会では、弁護士会の定める報酬規程は独禁法に抵触するから無くそうと動いています。
訓 そんなことをしたらその弁護士の処へ行ってみないと料金がわからないので、国民が困ります。
掘 そうですね。弁護士の料金が、何らかの形で事前に予測できるよう、現在弁護士会で努力している処です。