商品先物取引は難しい
訓 近頃、商品取引で大損したという話をよく聞きますが、私も、ある商品取引会社の営業マンから商品先物取引を勧められました。商品先物取引とは一体何でしょう。
掘 商品先物取引とは、将来の一定時期に物の受渡しをすることを約束して、その価格を現時点で決める取引である、と定義されています。
売付けと買付けがあり、売付けは将来の一定時期に現時点で決めた価格により受け渡し、買付けは将来の一定時期に現時点で決めた価格により物を受領する、権利義務を負います。
結論として、意味のわからないものには、手を出さないことをお勧めします。
訓 業者は、皆、許可を受けているのでしょうか。
掘 いえ、すべてが許可を受けているとは限りません。
訓 商品先物取引は気をつけなくてはいけないと言われていますが、それは何故ですか。
掘 業者が不当な勧誘をして、不合理な取引を繰り返すことがあるからです。
訓 消費者を保護する規制として、どんなことがなされていますか。
掘 消費者保護規制としては、
①適合性、つまり、顧客の知識・経験及び財産の状況に照らして不適当な勧誘を行ってはならない。
②説明義務、つまり仕組みや危険性をきちんと説明しなければならない。
③書面交付、つまり契約の概要や危険性等を書面で交付しなければならない。
④新規委託者には一度にたくさんの取引をさせてはならない(各社によって異なるが、通常三ヶ月で二〇枚。枚は取引の単位で、例えば金の場合は一枚が一キログラム)。
⑤同一限月の両建(同量の同一商品の売建玉と買建玉を同時に保有すること)を勧誘してはならない。不当な手数料かせぎになるからです。
⑥仕切の拒否や回避をしてはならない。つまり、顧客が手仕舞いしたいと言ったら受け入れなければならない。
⑦委託証拠金なしに取引してはならない。
等です。しかし、これらの規制が守られない場合が多く、追い証(追加の委託証拠金)を求められて、たちまち財産を失ってしまうことがあります。
訓 政府は自己責任の原則の時代だと言いますが。
掘 自己責任とは、本当に取引の内容を理解し、時間があって相場の動きを正確に把握できることが前提で、むやみに前向きになることではありません。株式投資も商品取引も十二分に勉強して自信がある場合に限ってすることです。業者の言いなりにならないで下さい。
訓 商品先物取引には、色々わからない用語があるのですが。
掘 日本商品先物取引協会(電話三六六四―四七三一)から「商品先物取引委託のガイド」というパンフレットがでており、用語解説がなされていますので、それを見て下さい。
入学辞退者の入学金は?
訓 京都で入学金を返還せよという判決が出たことが新聞に出ていましたが、内容をお話して頂けませんか。
掘 A B C Dという四人の女子学生が原告です。Aは四月五日、入学式に欠席(黙示の辞退)、Bは二月八日に辞退を通知、Cは四月三日に辞退を通知、Dは三月二二日に辞退を通知しましたが、何れも他の志望校に合格したからです。
訓 辞退の時期によって判決に違いが出ていますか。
掘 判決は、入学金は学生としての地位を取得する為の金銭で、在学契約は消費者契約法にいう消費者契約だと言っています。
そして四月一日以後の辞退又は入学式の欠席の場合、入学金を除く学納金相当額の返還を命じ、四月一日以前の解約の場合、入学金及び学納金の双方の返還を命じています。
つまり四月一日には学生の地位を取得するというのです。
訓 学納金とは何ですか。
掘 大学等から提供される便益の対価で、授業料、建設協力金、スポーツ科学実習費、実験実習費、育友会費、施設設備費等、名目を問いません。
訓 入学手続をするとき学納金不返還、及び入学金不返還の誓約書に捺印すると聞いていますが。
掘 その特約については、消費者契約法第九条一号は、平均的損害額を超えるものを無効とする趣旨で、大学が入学辞退により被る平均的損害はないから無効だといっています。
訓 大学は予算がたたず困るのでは。
掘 実際に損害があるかどうかは、大学が立証すべきことです。
訓 これからの対策としては、学生の親としてどうすれば良いですか。
掘 入学金を払って他の大学も合格した場合は、四月一日以前に入学を辞退しますとはっきり内容証明郵便で大学に出すこと。
又、学納金については、授業が始まる前に辞退の意思表示をきちんと書面で出すこと。
日本人は書面を出すことを角がたつと嫌いますが、その姿勢がかえってトラブルを生むのです。
なお、この問題については、その後大阪と東京で少し違う判決が出ています。いずれ最高裁判決で確定すると思います。
訓 私の知人も、三月中に辞退したのに入学金を返してくれないなどと言っていますがどうしたら良いでしょう。
掘 弁護士に相談して、手続をとって下さい。何人かが一緒にやった方が費用も安くなるはずです。
強化されたヤミ金融対策法
Q ヤミ金融に対する規制の法律が強化されたと聞きましたが、どのような内容ですか。
A 最近、貸金業の登録の有無を問わず貸金業者が出資法の制限利率をはるかに超える利息を強行に取り立てる事案が頻発して社会問題化したために、平成一五年八月に、ヤミ金融の取締のために「貸金業規正法」と「出資法」の一部を改正して、①貸金業の登録制度を厳格にし、②違法な広告や勧誘行為を禁止し、③貸金業者の取立行為についての規制を強化し、④違反者に対する罰則を強化し、⑤年一〇九・五%を超える利息の契約をしたときはその貸付契約自体を無効とする、などの措置を講じたのです。
Q ①の登録制度を厳格にしたというのは、具体的にはどういうことですか。
A 暴力団員には貸金業の登録をさせないとか、各営業所に貸金業取扱主任者を置かなければならないようにした、ことなどです。
Q ②の違法な広告や勧誘行為の禁止というのはどのようなことですか。
A 無登録業者による広告や勧誘行為を禁止するなどしました。
Q ③の取立行為の規制強化というのは、どのようなことですか。
A 貸金業者による取立行為について、 従前は、「取立をするにあたっては、人を威迫し又は平穏を害するような言動により、その者を困惑させてはならない」と抽象的にしか定められていなかったものを、今回の改正により、これに加えて、具体的に、次の六つの禁止事項を法律に明記しました。即ち、○イ正当な理由がないのに、夜間(九時から翌朝八時)に、借主や保証人に対して、電話、FAX、居宅へ訪問することを禁止し、○ロ正当な理由がないのに、勤務先など居宅以外の場所へ、電話、電報、FAX、訪問することを禁止し、○ハ貼り紙や立て看板等により借入の事実などを他人に知らせることを禁止し、○ニ他から借り入れて返済するようみだりに要求することを禁止し、○ホ借主や保証人以外の人に対して返済するようみだりに要求することを禁止し、○ヘ弁護士、司法書士、裁判所から債務処理に関する通知がなされた後に、借主や保証人に直接請求しないよう要求された場合に、さらに、借主や保証人に対して直接請求することを禁止しています。
Q ④の違反者に対する罰則の強化というのはどのようなことですか。
A 例えば高金利の処罰について、三年以下の懲役と三〇〇万円以下の罰金だったものを五年以下の懲役と一〇〇〇万円以下の罰金に引き上げるなど、罰則を強化しています。
Q ⑤の高金利の契約をしたときはその貸付契約自体を無効にする、というのはどういう意味ですか。
A 契約が無効ですので、利息の定めも無効になり、利息については一切支払う必要がないという意味になります。
Q その場合、借りた元金は返さなければならないのですか。
A 貸付行為の全体が違法となり、違法な行為によって交付した元本は返さなくてもよいというのが民法上の結論になるはずですが、元本だけは返すべきだという考え方もあり、今後の裁判所の判断によることになります。