マンション建替え円滑化法について
訓 マンションの建替えの円滑化等に関する法律が、平成一四年一二月に施行されたというのですが、どんな法律ですか。
掘 まず、マンション建替えに関する法律には、建物区分所有法とマンション建替え円滑化法があります。前者は第六二条で建替え決議の要件(五分の四)を定めて老朽化などの一定の条件があれば、多数決で決議してもよい、としています。後者は円滑に建替えができるよう手続を定めたもので、都道府県知事の認可によって法人格をもつ建替組合を設立できたり、旧マンションに対する賃借権や担保権を一括して新マンションに移行させることができる「権利変換手法」を利用することができるので、建築請負業者との契約や担保権の処理など、大きなメリットがあります。全員の同意がある場合、円滑化法によらないでも建替えはできます。
訓 わかりました。それでは老朽化した場合の円滑化法による手続を教えて下さい。
掘 建替えで組合の区分所有者及び議決権の各五分の四の賛成(登記だけで死亡している場合、その相続人が区分所有者)を得るためには、次のことを検討しておかなければなりません。まず①維持・補修で済ませた場合との費用の違い、②再建するマンションの規模や機能、③具体的な建替えに要する費用負担、④様々な価値観を持つ区分所有者との合意形成の進め方、等です。相談相手は、管理業者、建築士、弁護士等です。
訓 検討の進め方はどうするのですか。
掘 検討委員会のような組織がつくられ、アンケートの実施などで多くの区分所有者が納得いくようなマンションの規模や適切な費用負担について考え方をまとめておきます。
費用には、①旧マンションの解体費用、②新マンションの工事費用、③仮住所の費用が含まれます。優良建築物等整備事業の補助が利用できる場合、全工事費のおよそ一五~二〇㌫程度が補助されます。資金には、住宅金融公庫による融資制度や社団法人全国市街地再開発協会による債務保証制度が用意されています。
訓 建替え決議のとき何をきめるのですか。
掘 ①新マンションの設計の概要、②旧マンションの取壊し及び新マンションの建築に要する費用の概算額、③②の費用の分担に関する事項、④新マンションの区分所有権の帰属に関する事項です。
訓 建替えに参加したくない人にはどうしたら良いですか。
掘 建替決議に賛成した者は、参加しない者に対し、決議成立後二ヵ月以内に参加するか否かの催告をし、参加しない者には売渡しを請求します。これは形成権として諾と言わなくとも売買契約が締結されたと同じになります。円滑化法では建替決議から一年以内に売渡請求し、遂行に支障が生ずる場合裁判所は代金支払叉は提供の日のいずれか早い日から一年以内の明渡期限を定めます。
訓 建替組合の設立はどんなメリットがありますか。
掘 建替合意者が五人以上共同して、定款と事業計画を定めて都道府県に許可を申請します。そのメリットは法人格が与えられ、区分所有権の買取りや建替組合名義での資金調達、工事発注契約が可能になります。また、組合運営のルールが明確化され、合意形成、事業実施の円滑化が図られます。
訓 権利変換手続とは何ですか。
掘 マンション建替えの事業前の権利と事業後の権利について、その変動の内容を定めた計画を都道府県知事が認可することによって旧マンションに関する権利を新マンションに一斉に移行させる手段です。
訓 賃借人や担保権者には具体的にはどうしたらよいのでしょう。
掘 権利変換期日の前後、権利を失う人には補償金を払います。また従前の居住者には一ヵ月以上の期間をおいて明渡しを求めることができます。賃借人は賃貸人が新マンションに移らなくとも新マンションに居住できます(円滑化法六〇条四項)。なお、実施者は転出する区分所有者や賃借人の居住の安定を確保する必要があり、例えば東京都が設置した都民住宅や住宅供給公社の賃貸住宅を活用することになります。
個人情報保護法
Q 平成一七年四月から、個人情報保護法により、個人情報の取扱を厳しくしなければならなくなったと聞きましたが、どのようなことですか。
A 五〇〇〇人分以上の個人情報データベース等を保有して事業を行っている人は、「個人情報取扱事業者」として、その個人データの取り扱いについて様々な義務を課されることになりました。そして、データの対象となっている本人は、その事業者に申し出て、データの内容について開示を求めることができ、データが間違っている場合には訂正してもらったり、又、本人の同意なく目的外に利用されたり第三者へ提供されたりした場合や不正に取得された場合などにはデータの利用停止や消去を求めることができるようになったのです。
Q なぜこの法律ができたのですか。
A インターネットにより瞬時に様々な情報が手に入るようになって便利になった反面、個人の情報が本人の知らないうちに他人に知られてしまうという事態も起こってきました。インターネットは世界的なものなので国際的に統一して個人情報を保護しようという要請もあり、日本でも、住民基本台帳ネットワークが施行されるに際して個人情報の保護の必要性が叫ばれ、又、顧客データが流出する事件が多発するなどしたために、個人情報を保護する必要があるとして「個人情報の保護に関する法律」が制定されました。ですから、この法律は国際的な統一基準に則って規定されています。個人情報は、この法律のほかに、「行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律」や各地方自治体の「条例」等によって、国や地方自治体等が取り扱う個人情報も保護されるようになっています。
Q「個人情報」とはどういうものですか。
A 法律では、「生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別できるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む)をいう。」と規定されています。
Q 五〇〇〇人分以上の個人データを集めた場合には、必ず、「個人情報取扱事業者」になるのですか。
A 社会的にみて事業と言えるものが対象となり、個人的に行う親戚・友人等の宛名管理などでは個人情報取扱事業者となることはありません。又、事業者であっても、市販のカーナビや、CD―ROM電話帳、電子住宅地図を購入してそのまま利用するときは、それらは個人データの数に参入する必要はありません。
Q 個人情報取扱事業者に課される義務にはどのようなものがありますか。
A ①取得時に利用目的を明確にし(ただし、利用目的が明らかな場合は不必要)、その達成に必要な範囲内で取り扱うこと、②偽りその他不正な手段により個人情報を取得してはならないこと、③その利用目的達成に必要な範囲内で正確・最新の内容に保つこと、④漏えい、滅失、毀損の防止その他の安全管理のための措置が講じられるよう配慮すること、⑤本人からの訂正、利用停止等の申出に応じられるように配慮すること、等です。
Q それらの義務を遵守する具体的方法を知るすべはありますか。
A 一般の事業者であれば、経済産業省のホームページに掲載されている「個人情報の保護に関する法律についての経済産業分野を対象とするガイドライン」等を参考にするとよいでしょう。
裁判員制度について
訓 二〇〇九年五月までに、裁判員制度が導入されると聞きました。
掘 裁判員制度とは、特定の刑事事件の審理に、一般市民から無作為で選ばれた裁判員が参加して、裁判官と一緒に有罪・無罪の決定や量刑の判断を行う制度です。
訓 法律の専門家ではない一般市民が、刑事事件に参加することには、どのような意義があるのでしょうか。
掘 刑事司法に一般市民の社会常識を反映させ、市民が司法の分野において、右のように主体的・実質的に関与することに大きな意義があります。
訓 対象となる事件はどんな刑事事件ですか。
掘 原則として、①死刑又は無期の懲役・禁固に当たる罪に係る事件、②法定合議事件であって故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係るものが対象になります。
訓 裁判員に選任されるのはどのような人ですか。
掘 衆議院議員の選挙権を有する者です。
しかし、検察官、弁護士の職にある者や、その他当該事件の当事者ないし関係者などはなれません。
訓 では、裁判員になることを辞退することはできますか。
掘 年齢七〇歳以上の者や過去五年以内に裁判員の職にあった者、「重い疾病による出頭困難」「日常生活を行うのに支障がある同居親族の介護・養育」等、政令で定めるやむを得ない事由で裁判員の職務を行うこと又はその候補者として裁判員等選任手続の期日に出頭することが困難な者等は、裁判員となることについて辞退の申立てをすることができます。
単に忙しいという理由だけでは辞退できません。
訓 裁判員として選任されて休暇をとろうとしたが、勤務している会社が休暇を認めない場合はどうしたらよいですか。
掘 裁判員の職務は、労働基準法第七条にいう「公の職務」に該当するものと考えられ、雇主は、休暇の取得を拒絶できません。
また、労働者が裁判員の職務を行うために休暇を取得したこと等を理由として、解雇その他不利益な取扱いをすることは許されません。
訓 合議体での評決はどのように行われますか。
掘 評決は、構成裁判官及び裁判員の双方の意見を含む合議体の員数の過半数の意見によることとされ、過半数の多数決による制度が採用されています。
訓 裁判員の任務が終了するのはいつですか。
掘 原則として、終局裁判を告知したときに終了します。
訓 裁判員は、裁判所までの交通費や宿泊費用、報酬はもらえますか。
掘 裁判員には、一定の旅費、日当及び宿泊料が支給されます。
訓 裁判員として、注意することはありますか。
掘 裁判員は、裁判中は当然ですが、職務終了後も、評議の秘密その他の職務上知り得た秘密を漏らすことは許されませんので留意する必要があります。