交 通 事 故 の 補 償
Q 会社の仕事で会社の車を運転中に他の車に衝突されて、後遺症を伴う傷害を負いました。私はどのような補償を受けられるのでしょうか。
A あなたは、加害者又は加害車両の加入している自動車保険の保険会社から、①治療費、②入院雑費、③付添費、④通院交通費、⑤休業損害、⑥後遺症に基づく逸失利益、⑦入通院慰謝料、⑧後遺症慰謝料、などの損害を賠償してもらうことができます。又、労災保険から、治療費や休業損害の一部、逸失利益の一部について補償を受けることができます。但し、労災の給付と保険会社からの賠償金は重複して支払を受けることはできません。そして、これらとは別に、会社の車に掛けられた自動車保険から搭乗者後遺障害保険金を受け取ることができる場合がありますし、重度の後遺症の場合には労災保険から年金給付を受けることもできます。又、あなた自身が傷害保険等に加入していれば、その保険金を受け取ることができる場合もあります。
Q 手続きはどのようにすればよいですか。
A まずは、あなたの会社に労災保険の申請手続きをしてもらって下さい。そのうえで、加害者側の自動車保険会社や、あなたの会社が加入している車の保険会社、あなた自身が加入している傷害保険等について支払の請求をします。
Q 請求後の流れはどうなりますか。
A 自賠責保険や労災保険、搭乗者保険の手続きは一定の基準に基づいて算定されるので結果を待っていれば良いのですが、加害者側の任意保険については注意を要します。といいますのは、通常、任意保険の保険会社から損害賠償額が提示されるときに、その保険会社の支払基準に基づいて損害額を算定してくるのですが、その支払基準が裁判所で用いられる支払基準よりも大幅に低額であることが多いのです。従って、あなたとしては、弁護士等に相談して、保険会社の提示した賠償額が適正か否かを検討してもらう必要があります。それが適正でなければ適正な金額を補償してもらうよう交渉することになります。交渉の結果、両者が納得すれば、示談書を取り交わして、賠償金が支払われることになります。
Q 話がまとまらないときはどうなるのですか。
A 調停や訴訟等の裁判所の手続きをとらざるを得ません。
Q 話がまとまる前に一部でも支払ってもらうことはできませんか。
A 示談が成立する前であっても、「仮渡し」、「内払い」という制度により一定の金額までは支払ってもらうことができますので、保険会社に話をしてみてください。
Q 事故の際に、私のほうに過失があった場合には、賠償額が減額されると聞きましたが、どういうことですか。
A 過失相殺と言って、被害者側にも過失がある場合にはその過失割合に応じて、損害額が減額されるのです。但し、自賠責保険についてはその過失相殺が被害者側に有利になるよう緩やかに適用されることになっています。
Q 受け取った損害賠償金には所得税がかかりますか。
A かかりません。
金融商品取引法について
訓 今年、金融商品取引法という法律が制定されたそうですが、どんな法律かご説明頂けますか。
掘 はい。この法律は、金融審議会が平成一七年一二月に打ち出した「投資サービス法に向けて」という報告を受けて、今までの証券取引法を拡大変更したものです。
この法律では、預金と保険については、変額保険やデリバティブ預金のように変動性の激しいもの以外、直接的に規制していず、株や商品取引、その先物、さらに組合型ファンド(任意組合や匿名組合など)や様々なデリバティブ取引、抵当証券等投資性の強い金融商品に関する法律となっています。デリバティブとは、リスクの売買で、ウェザーデリバティブとか、クレジットデリバティブがあります。
法律の枠組は、①金融商品に対する横断的な投資者保護法制の構築、②開示制度の拡充、③取引所等の自主規制機能の強化、④不公正取引等への厳正な対応の四本柱になっています。
訓 我々消費者に最も関係の深い法制はどんなものでしょうか。
掘 不招請勧誘の禁止とクーリングオフ制度についてご説明します。
不招請勧誘の禁止とは、勧誘の要請をしていない顧客に対し訪問又は電話による勧誘をしてはならないというもので、これに違反すると被害を受けた者は不法行為に基づく損害賠償の請求が可能です。ファックスや電子メールは対象になりません。
又、取引を行なわないことを明らかにした顧客には、再勧誘をしてはならないとか、勧誘に先立って顧客に対しその勧誘を受ける意思を確認する義務等も定められました。
又、適合性の原則(顧客の知識や経済状態に照らして不適当と認められる勧誘をしてはならないという原則)も認められました。厳格な説明義務も課されました。
一方、クーリングオフとは、契約締結時の交付書面を受領した日から数えて政令の定める日数を経過するまでの間は、書面により契約を解除できる制度ですが、日数については証券投資顧問業法上の一〇日が参考にされます。
訓 開示制度の拡充とは何でしょうか。
掘 流動性の高い上場株式の発行者等には、有価証券届出書(発行した有価証券又はその交付を内閣総理大臣に届出る書類)の提出の外に内部統制報告、四半期報告、経営者による確認書(有価証券報告書等の記載内容が適正であると確認した旨を記載した書面)を提出する義務が定められました。
又、投資信託の場合等、目論見書(何に投資するのか、どういう運用をするのか、最低いくらから購入できるのか、手数料等の費用はいくらか等の情報)が提供されなければならず、又、ファンドの運用事業者は、所有者へ運用報告書交付義務が課せられています。
訓 少しわかってきましたが、この法律にはその他どんな規定がありますか。
掘 この新法では、アメリカ型の企業改革法(いわゆるSOX法――内部統制の整備等)の導入、認定投資者保護団体による裁判外紛争解決手続(ADR)の創設、公開買付制度(TOB)や大量保有報告制度に関する見直し、各種罰則の強化等多岐にわたっています。
郵政民営化等により大量のリスクマネーが市場に流れるといわれていますが、そうした場面でのトラブルをなくそうという意図が盛り込まれています。
全部で二二七条の大部の法律ですが、二〇〇六年六月一四日に公布され、公布から二〇日を経過した日から施行されているので、現在は既に一部施行されています。
生 前 贈 与
○Q 父が亡くなり、相続人の兄と私で遺産分割を行うことになりました。兄は父から長年生活費をもらい、大学の学費も出してもらっていました。これらの件を主張して、遺産分割に反映させることができますか?
○A お兄さんがもらっていた生活費や学費が、「特別受益」(民法九〇三条一項)として、持戻しの対象なれば、その分を相続財産に加えて精算することになりますので、あなたに有利になります。但し、それは計算上の作業であって、持戻し分が直接、遺産分割の対象になるわけではありません。
例えば、相続財産が一〇〇〇万円あったところお兄さんの特別受益分が三〇〇万円であれば、これを加えた一三〇〇万円の二分の一である六五〇万円が各人の法定相続分になり、この六五〇万円から三〇〇万円を控除した三五〇万円が、お兄さんの具体的相続分とされることになり、あなたの具体的相続分は六五〇万円になります。
○Q では、父から兄がもらった生活費や学費は「特別受益」になるのですか?
○A 生活費や学費にしろ、一般に広い意味に解されている「生計の資本としての贈与」に該当するのかが問題になりますが、被相続人であるお父さんの資産、収入、生活状況、社会的地位等から、扶養義務の範囲内であると認められると「特別受益」に該当しないことになります。
なお、扶養義務の範囲外であったとしても、お兄さんが相続財産の維持及び増加に寄与し、その労に報いるために生活費や学費を出していたのであれば、「特別受益」に該当しないとするのが最近の判例の傾向です。
○Q では、父が契約し、被保険者となっていた生命保険の保険金受取人が兄になっているのですが、この保険金請求権はどうなりますか?
○A 生命保険金は純粋な意味での相続財産には含まれないと解されていますが、このような場合、保険契約者であるお父さんが支払った保険料が保険金請求権の対価たる実質をもつことから、「特別受益」に該当するか否かが争われています。
通説は、「特別受益」として持戻しの対象とするべきであるとしますが、保険料と保険金額が異なることから、持戻しの対象とする金額については、①保険料額、②保険金額、③被相続人死亡時の解約返戻金、④死亡時までに支払済の保険料全額に対する割合を保険金に乗じて得た金額、とする等の諸説があります。
裁判例も判断が分かれていますが、平成一六年に「保険金請求権は、特別受益には当たらないが、保険金の額、この額の遺産に対する比率、各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して、保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法九〇三条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、同条の類推適用により、特別受益に準じて持戻しの対象となる。」とする最高裁判例が出されているので、参考にして下さい。